12:10 第一、第二の衛兵所を過ぎ、町に通じる鉄の門の所まで来ると、門がひとりでに開いたので、そこを出て、ある通りを進んで行くと、急に天使は離れ去った。

 12:11 ペトロは我に返って言った。「今、初めて本当のことが分かった。主が天使を遣わして、ヘロデの手から、またユダヤ民衆のあらゆるもくろみから、わたしを救い出してくださったのだ。」

 12:12 こう分かるとペトロは、マルコと呼ばれていたヨハネの母マリアの家に行った。そこには、大勢の人が集まって祈っていた。

 

ペトロは、神様によって不思議にも牢屋を脱出することができました。「第一、第二の衛兵所を過ぎ、町に通じる鉄の門の所まで来ると、門がひとりでに開いたので、そこを出て、ある通りを進んで行くと、急に天使は離れ去った。」

 

このところを読むと、中国の家の教会の指導者であったユン伝道者の「天国の人」を思い起こします。現在の中国では、クリスチャンに対する迫害が続いていますが、「天国の人」によると、ユン伝道者もイエス・キリストの福音を宣べ伝えたために幾度も迫害され、投獄され、拷問を受けることが繰り返されていましたが、中国でも決して脱獄することはできないといわれていた刑務所に入れられました。

 

そこでも激しい迫害が行われましたが、ある日、彼は神様の導きによってその牢獄を脱出したのです。すくし長くなりますがその部分を引用します。

 

 1997年5月5日の、ちょうど朝8時前だった。普通に考えれば、この時間は、逃げるのに最も悪い時間帯である。通常は、刑務所中で様々な活動が行われており、すべての看守は配置に付いている。

私は、足を引きずって監房から出、廊下にある鍵のかかった鉄の扉に向かって歩き出した。私の心は、神に従うことだけに集中していた。私はまっすぐ前を見て、1歩進むごとに心の中で祈った。

 

扉の開け閉めをするときには、看守はボタンを押す。看守が、3階の階段吹き抜けの1番上に座っていた。鉄の扉には、黒い布のかかった小さな窓が開いているだけなので、扉の向こう側を見ることは不可能である。私が扉のところに着いたとき、別の主のしもべミュシェンが監房に戻ろうとしたため、扉が開いた。その日の朝、彼は刑務所の中庭を掃除するよう命じられていたのだ。ミユシェンが通り過ぎようとした時、私は、「待って!扉を閉めないで」と言った。私は、歩幅を変えることなく通り過ぎることができた。主のタイミングは完璧である!

私が通り過ぎると、ミユシェンは小声で「ユン兄、行くのかい? 死ぬのは怖くないのか?」と尋ねた。そして、びっくりした面持ちで、監房へと戻って行った。

ミユシェンが監房に戻るのに付き添っていた看守がいたのだが、看守がミユシェンのために扉を開いたちょうどその時、廊下の向こうにある事務室で電話が鳴り、看守は振り向くと慌てて走っていった。

 

私は、廊下の壁にほうきが立てかけてあるのに気づいた。私はそれを持つと、そのまま廊下を降りて2階へと歩き続けた。2番目の鉄の扉に向いた机には、武装した看守が配置されていた。その扉は、時々開いたままになっていた。というのも、当直の看守は扉を日夜監視するよう命じられているため、鍵をかけなくてもそれほど危険だとは認識していなかったのだ。その時、聖霊が私に語りかけた。

「行け、ペテロの神がお前の神だ!」

主は、どうにかしてその看守の目を見えなくしたようだった。看守は私をまっすぐ見ていたのだが、その目は私の存在を全く認識していなかった。私は、看守に何か言われるかと思ったのだが、まるで私が目に入らないかのように、ただ見過ごした。

看守は、何も言わなかった。

私は看守の前を通り過ぎ、後ろを振り返らなかった。いつ後ろから撃たれてもおかしくないと思っていた。私はこれがこの世での最後の瞬間だと思いながら、主に、もうすぐ私の霊を受け取ってくださいと、声を殺して祈っていた。

私は、廊下を歩き続けたが。誰も私を止めず、どの看守からも声をかけられなかった。

 

中庭に続く大きな鉄の扉に着いたとき、なんと扉が開いているのに気づいた。それは不思議なことだった。というのもこの扉は、普段、最も警戒の厳しい扉だからだ。いつもは、1階の扉のところには、一人は内側にもう一人が外側と、2人の看守が付いているはずだが、何らかの理由で看守が2人ともおらず、扉も開いているのだ。

私は、3階から持ってきたほうきを捨てると、中庭へと歩いて出て行った。明るい朝の光に、私はたじろいだ。私は中庭で何人かの看守の側を通り過ぎたが。誰も何も言わなかった。そして、刑務所の表門を通り抜けたのだが、これも、何らかの不思議な理由ですでに少し開いていたのだ!

 

私の心臓はドキドキしていた。私は、鄭州第1最高防護刑務所の外の通りに立っていた。後で、この刑務所から脱獄した人間は一人もいないと聞かされた。

すぐに小さな黄色いタクシーが私の横に止まり、20代後半の運転手が、後部座席の扉を開いて、「どこまで行きますか?」と尋ねた。

私は車に乗り込み、「出来るだけ急いで事務所に行かなければならないんだ。出来るだけ早く運転してくれ」と答えた。私は、鄭州にいるクリスチャン家族の住所を告げ、刑務所から走り去った。私は運転手に、もし渋滞に遭ったら回り道をして、ともかくどんな理由でも止まらないでくれと言った。

 

これらすべての出来事は、ほんの数分のうちに起こった。まるで白日夢のようだった。これらすべての出来事が、本当に起こったのかそれとも夢を見ているのかも分からなかった。主がどうやってこれを成し遂げたのか、いつもは堅くしまっている扉がどうしてすべて、私のために開いたままになっていたのか、私には分からなかった。分かっていたのは、ただ、私は今タクシーに座って友人の家に向かっているということだけだった。

家に着くと、運転手に、代金を払うお金を借りてくるから待っていてくれと頼んだ。

私はアパートの3階まで階段を上り、玄関のベルを2回ならした。そこの娘の一人がドアののぞき窓から私を見て、すぐに私だと分かった。彼女は興奮しながら「まあユン兄、病院(刑務所のこと)から退院してきたのね!」と言った。

私は彼女に、「うん。病院を出てきた。だけど、普通の手続きで出てきたんじやないんだ。お願いだから、タクシー代を払うお金を少し貸してくれないかな」と言った。

 

彼女は私を見てあまりに興奮したため、扉を開くのさえ忘れてしまった。ようやく戻ってきて、お金を渡してくれた。私は急いで階段を駆け下り、待っている運転手にお金を支払った

奇特なこのクリスチャン家族は、私を暖かく家に招き入れてくれた。娘の一人は「教会みんなで1週間以上も、あなたとあなたの仲間のために断食し祈っていたのですよ。昨日、聖霊が母に「私はユンを釈放する。最初にユンが立ち寄るところは、お前の家だ。ユンは少しの間ここに留まって、お前と一緒に祈るだろう」と言ったのです」

 

「両親は私たちに、あなたが来ることを言い、あなたをかくまう秘密の場所を用意しました。私たち以外でその場所を知っている人はいません。母はすでに、食べ物や服をあなたのために用意しています。さあ、服を着替えてください。そこへお連れします」」引用ここまで。

 

 実際には、さらに詳細にこの前後の出来事が記されていますが、長くなるので一部分のみ引用させていただきました。ユン伝道者はその後ドイツに亡命し、福音宣教の働きを続けてこられました。

 

祈り

 

天の父なる神様、鎖につながれて牢獄に入れられている囚人が、不思議な導きによって解放されるように、罪と死の力に束縛されている者は、自分の力によっては決して解放されることは不可能なことですが、あなたの導きによって、イエス・キリストによって自由なものとされる恵みを感謝いたします。

イエス・キリストの御名によって祈ります。