アメリカの偉大な将軍で、天才的な文学者と言われた人に、ルー・ウォレスがいます。
彼は過激な無神論者でした。人々を勇気ある人生から逃避させると見えるキリスト教信仰に対して、彼は腹が立って仕方がありませんでした。

ある時、彼は友達に対して、一つの誓いを立てました。それは聖書の権威を撲滅するために、キリストを抹殺するために、一冊の本を書くというものでした。
取り憑かれたように彼は研究を開始しました。それから5年間、キリストの生涯の地であったイスラエルに飛び、ヨーロッパとアメリカの主要な大学を訪ね、死に物狂いでキリスト研究に没頭しました。

やがて、山のような資料に囲まれて、彼は「キリスト教撲滅論」を書き始めました。第1章を書き終え、第2章に取り組んでいたある夜のことでした。
突然彼はペンを投げ出すと、いすから崩れ落ちて、そこにひざまずき、叫びました。
「我が救い主よ。わが神よ。」
それまでずっと彼の敵であったキリストに向かって、ルー・ウォレスは叫んだのです。
「我が救い主よ。わが神よ。」と。

3日目に空っぽになった墓。その後、あの頼りなくおどおどしていた弟子達に起こった一大変化。文字どおり、命をかける1世紀、2世紀の宣教と殉教。キリストの復活の事実がウォレスの心を悩ませたのでした。
「父よ。彼らをおゆるしください。彼らは何をしているのか、わからずにいるのです。」(ルカ 23:34)

十字架上のキリストのこの叫びが、ウォレスの心をとらえて離さなかったのでした。かれはキリストを告白して悔い改めました。そして、それまでの原稿を破り捨てると、新たにペンを握り直しました。そこに書かれたものこそ、キリストの時代を取り扱った歴史小説としては比類のない不朽の名作と言われる、あの「ベン・ハー」だったのです。