27:11 さて、イエスは総督の前に立たれた。総督がイエスに、「お前がユダヤ人の王なのか」と尋問すると、イエスは、「それは、あなたが言っていることです」と言われた。

イエス様は、総督の前に立たれました。この「総督」とは、ローマ帝国の総督ポンテオ・ピラトのことです。最高法院は裁判で死刑の宣告をした後で、イエス様を、ローマ帝国の総督ピラトに渡したのでした。ピラトの手によって、イエス様を殺すことにしたのです。

総督ピラトがイエス様に、「お前はユダヤ人の王なのか」と尋問すると、イエス様は、「それは、あなたが言っていることです」と言われました。ピラトがイエス様に、このように尋問したのは、祭司長たちと長老たちが、イエス様を「ユダヤ人の王と自称する者」としてピラトに訴えたからです。最高法院でのイエス様の罪は、自分を神と等しい者とすることによって神を冒瀆したという宗教的な罪でしたが、ここでイエス様は、自分をユダヤ人の王と自称して、ローマ皇帝の支配に逆らう政治的な罪として訴えられているのです。

総督ピラトは、もし、祭司長たちと長老たちが、イエス様を、神を冒瀆する者として訴えたならば、「自分たちの律法に従って裁け」と言ったことでしょう。しかし、祭司長たちと長老たちが、イエス様を「ユダヤ人の王と自称してローマ皇帝の支配に逆らう者」として訴えたゆえに、ピラトはイエス様を裁かないわけにはいかなかったのです。

祭司長たちと長老たちは、最高法院の裁判において、イエス様が神の子であり、メシアであると宣言されたと理解しました。そして、イエス様はユダヤ人の王と自称し、ローマ皇帝に逆らう反逆者であるとして訴えたのです。

「お前がユダヤ人の王なのか」。この総督ピラトの尋問に対して、イエス様は、「それは、あなたが言っていることです」と言われました。このイエス様の御言葉は、相手に問いを投げ返すか、間接的に答えることを拒否する言い方です。イエス様は確かにユダヤ人の王であられますが、総督ピラトが思い描いているユダヤ人の王とはかけ離れているゆえに、「それはあなたが言っていることです」と間接的に答えることを拒否されたのです。

祈り

天の父なる神様、イエス様の裁判や十字架刑は、最高法院やローマ帝国の側の権力者たちによって動いているように見えますが、実はすべては神の御計画のうちにあり、イエス様は黙々と彼らのなすがままになさいました。それによって、これ以外にはない罪の贖いを実現し、救い主としてのお働きを実現してくださった事を心より感謝いたします。
イエス・キリストの御名によって祈ります。アーメン。