5:3 すると、ペトロは言った。「アナニア、なぜ、あなたはサタンに心を奪われ、聖霊を欺いて、土地の代金をごまかしたのか。
5:4 売らないでおけば、あなたのものだったし、また、売っても、その代金は自分の思いどおりになったのではないか。どうして、こんなことをする気になったのか。あなたは人間を欺いたのではなく、神を欺いたのだ。」
5:5 この言葉を聞くと、アナニアは倒れて息が絶えた。そのことを耳にした人々は皆、非常に恐れた。
5:6 若者たちが立ち上がって死体を包み、運び出して葬った。
アナニア夫妻が、土地を売り、その代金を使徒たちの足もとに置こうとしたことは、彼らが自主的に決めたことでした。誰から強制されたものでもない、彼らが自分で決めたことなのです。売らないでおけば、自分のものだったし、売っても、その代金は自分の思いどおりになったのです。
つまり、彼らが自分で、土地を売り、その全額を献げることを決めたのです。それなのに、彼らは、その代金をごまかして、その一部だけを持って来たのです。「ごまかす」という言葉は「盗む」とも訳せると申しましたが、その土地を売り、代金をささげると公に告げた段階で、それは「主のもの」となっていたのです。ですから、ここでペトロは、「なぜ、土地の代金をごまかしたのか、盗んだのか」と責めたのです。
3節には「聖霊を欺く」とあり、4節には「神を欺く」とあります。さらに、飛びまして9節にも「主の霊を試す」とあります。「聖霊」「神」「主の霊」これらは同じお方を指していますが、ペトロはここで両者を使い分けているのです。
3節で、「なぜ、あなたはサタンに心を奪われ、聖霊を欺いて」と言うとき、この聖霊は、アナニアの心に宿ってくださった聖霊のことを言っていると思われます。もしかしたら、この聖霊に促されて、彼らは、土地の代金をささげようと決心したのかも知れません。
しかし、実際、土地を売って、現金を目にしたとき、その心にサタンの誘惑が聞こえてきたのではないかと思います。その一部だけを持って行って、これがあの土地の代金です。そう言っても誰にも分からないのではないか。そのようなサタンの誘惑が聞こえてきたのだと思います。
そして、アナニアは、それを妻のサフィラにも話し、妻も承知の上で、それを使徒たちの足もとに持って来たのです。そのように考えると、土地を売ることの相談は、聖霊に促されてのものでしたが、代金をごまかし、その一部だけを献げるという相談は、サタンの誘惑によって行われたということができます。
ペトロの「なぜ、あなたはサタンに心を奪われ、聖霊を欺いたのか」という言葉は、そのアナニアとサフィラの心の移り変わりを教えているのです。
祈り
天の父なる神様、あなたのみ前に誠実に、正直に生きることが出来ますように。
イエス・キリストの御名によって祈ります。アーメン。